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福島大学

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福島大学農学群食農学類2019年4月開設

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農林水産省食料産業局
食文化・市場開拓課和食室
伊藤 百合子

 私は、福島大学経済経営学類を卒業後、平成26年4月から東京都千代田区霞が関にある農林水産本省に勤務しており、現在は和食文化の保護・継承のための政策や事業の企画・実施に携わっています。平成25年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が目前となり、国外からの和食人気は高まっていますが、その反面国内では、「手間がかかる、面倒」というような意見も多く、和食離れが進んでいます。私の部署では、民間企業とも協働しながら、和食文化の普及活動を行う人材を育成する等の事業や、五穀豊穣のシーズンで"いい(11)に(2)ほんしょ(4)く"の語呂合わせから「和食の日」である11月24日に向けたイベントの開催、忙しい子育て世代や子供たちに身近・手軽に和食を食べてもらうための商品やサービス開発等を促す「Let's!和ごはんプロジェクト」など、和食文化の良さを再認識してもらうとともに和食文化を次世代に継承していくための様々な取組を行っています。食のフィールドという自分の生活にも密接に関わる仕事ができ、とてもやりがいを感じています。

 さて、今となって振り返ってみると、現在の私がいるのは福島大学での学びや気づきがあったからこそだと思っています。在籍していた時には食農学類はありませんでしたが、食農学類でも教鞭を執られるご予定の小山良太教授については、2年次から4年次まで所属していた小山ゼミナールでご指導いただきました。なぜ私が小山ゼミを選択したのか?そのきっかけは、平成23年3月11日14時46分に発生した、東日本大震災です。震災からある程度時間が過ぎ、やっと震災前のように大学の授業が再開された頃、福島県産農産物はいわゆる風評被害を受けている状況でした。私は、その状況を目の当たりにし、「福島復興のために何かできることはないか」そんな思いが日々強くなっていき、そこで出会ったのが小山ゼミでした。小山ゼミでは机上の学習だけではなく、現地に赴き実態に沿った形での農業経済学を学べることが最も魅力的な点であると感じました。特に印象的な小山ゼミでの活動は、福島大学の学生が運営する企業活動、農家さんと協働で開催した「復興マルシェ」というイベントです。イベントの開催にあたり農家さんから色々な話を聴き、自分も「どのようにすれば、また福島県産農産物を安心して買ってもらえるのか」を一緒に考えていく中で、改めて、農業経営の大変さ、農家さんの思い、消費者の食に対する思い等、通常の授業では体験することが難しい様々なことを学びました。

 ゼミの活動の中で関わった農家さんの生の声として、今でも心に残っている言葉があります。それは、「何かしたい、諦めずに一歩を踏み出したい、と思っても、本当に必要なものが準備できず、その一歩が踏み出せない。震災により、生きがいを失ってしまった。」というような声でした。このような声を聞いたからこそ、私は、「一人一人が生きがいを生み出せるよう、何らかの形で貢献したい」という強い思いを抱くようになり、多くの人に関わることができると考えられる公務員を目指すことに決めました。また、大学での学びや災害の経験から衣食住の1つでもある「食」は重要であると痛感したこと、また、「農業」の分野はまだまだ変えるべきことが山積みで、逆にいえば可能性や夢が大きい産業であること、そして、広い視野を持って貢献できるような人材になりたい、挑戦したい、というような思いから、国家公務員として農林水産本省で働くことを決意し、今に至ります。大学のゼミでの活動を通じて得た思いや、ゼミで行った企画や広報等の経験が、現在の仕事の基礎として活きていると感じています。

 最後に、福島大学の卒業生として、高校生の皆さんへのメッセージになりますが、人生の中で大学の時ほど自分と向き合える時間を作れる時間はないと思います。その大切な時間をどこで何をして過ごすのか、それはとても重要なことです。新しく設立される福島大学食農学類は、これまでの単純な一次産業としての農業だけではなく、「食」と「農」を繋ぎ、儲かる農業、次世代へ持続可能な農業を目指し、地域と連携しながら、実際に足を運んでプロジェクトを企画し、地域の課題に現場の人々と協働して考え、解決策を模索することができるということで、大変魅力的な学類だと思います。

 私は国家公務員という道を選びましたが、食品関連企業、農業生産法人、農村企業家等、農業に携わることができる道は他にも沢山あります。私もまだまだ勉強途中ですが、皆さんにも食農学類で農業の可能性を学び、ぜひ、何らかの形で日本の「農業」の発展に携わってもらえたら嬉しいです。

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